パパ育児日記

2016.11.29

育児ノイローゼくん|東京パパの育児クロニクル vol.10

息子の誕生を機に、育児に専念するため脱サラしたのが2年前。それなりに育児をやってきたつもりだった。オムツ替え、寝かしつけ、ミルク作り、離乳食、ご機嫌取り、そして家事全般。自分なりのやり方を見出しては実践→改善→実践を繰り返し、ある程度の自信はついていた。

しかし、それらはすべて「ママとのふたり体制」の上に成り立っていたのだ。

仕事の打ち合わせを断わり、予定より2時間早く帰宅し準備した渾身のクリームシチュー。息子はにんじんひとかけらを口に入れ、すぐ出して、はい、おしまい。この3日間、彼が家で食べたのは市販の黒豆とロールパンとオレンジだけ。昨日は怒ってみた。ダメだったから今日は明るくやってみた。でも食べてくれない。どうしようもない虚無感。自分で自分が育児経験者だと思っていたこと自体が恥ずかしくなるぐらい、何をすればいいのかわからなくなった。

すると、リビングの扉の向こうから、育児ノイローゼくんがひょっこり顔を出しこっちを見ていた。ベタな悪い顔をして。ヘイユー!と手招きしていた。

はっとした。そうだ、彼は突然現れたわけではない。いきなり土足で上がり込んできたわけでもない。彼はずっと前から近くにいた。「ママとのふたり体制」の陰に隠れていただけで、むしろ彼は息子よりも先にこの家に住み着いていた。そして僕が「ひとり体制」になり、自暴自棄になり、空いている助手席の扉をそっと開けるのをずっと待っていたのだ。

ノーサンキュー! 笑顔で応答し、ぐずる息子を抱え散歩に出た。

心地よい初夏の風に吹かれ、息子はすぐさま眠りについた。道の先に見えるマンション群の明かりをみて思った。世の中にはたくさんのパパやママたちが、この「ひとり体制」に押しつぶされそうになりながらも、なんとかこらえてギリギリのラインを走り続けているのだ。育児ノイローゼくんはどの家庭にもいる。その事実に気づけただけでも、価値のある経験なのだと思った。

 

ikuji

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海パパ

1980年生まれ。脱サラ育児を決行した帰国子女クリエイティブ・ディレクター。現在は「働く主夫」として育児と仕事の両立に奮闘中。最近第2児が誕生し、長男の時の教訓を生かしつつ東京パパの育児スタイルを模索中。

 
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