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裏築地の名店を巡りながら、豊洲移転問題を考える

  • 築地初心者の週末TSUKIJI散歩【21】T.KOMURO
  • 築地散歩

東京都心の桜(ソメイヨシノ)が当初の予想日より1日早く、3月21日に開花したと発表されました。その後、三寒四温の日々。この原稿を書いている3月下旬、隅田川の桜もようやく三分咲きといったところ。
来週、4月上旬の1週間、荒天にならなければ、満開の桜を存分に堪能できそうですね。

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▲3月31日、花曇り&花冷えの1日。聖路加国際大学構内の桜は三分〜五分咲きです。

今回は、「裏築地」のちょっといい食品小売店の後編です。裏築地の魅力については2回前のこのコラムで口上を述べたので、早速お店の紹介に入ることにしましょう。
▶【前編】粋な名店揃い! 食のコンパクトシティ「裏築地」へ

裏築地の名店_1【築地ほわいと】

まずは1軒目。「築地ほわいと」(6丁目)。
お弁当屋さんです。店の前には「スーパーお母さん、きみちゃんが作るお弁当」「ホントの手作り弁当!!」という幟が。

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▲築地ほわいとの店の撮影に行ったら、閉まっていてこんな貼り紙が。4月3日から再オープンで、4月3日、4日、5月8日、9日は、全品400円にて販売だそうです。

店内に一歩入ると、パックに入った様々なおかずが並んでいます。好みの1品を手にレジに向かうと、そのパックの下の部分にホッカホカのごはんが盛られ、カウンターに並んでいるボトルのふりかけはかけ放題。これで、どれもがセットで500円です。実はこの店の一番の売りの商品は「ほわいとの健康カレー」

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▲一押しメニュー、ほわいとの健康カレーの作り方は店頭写真で解説。余分な油を摂取することはNO、と強烈にアピールしています。

何が健康かというと、カレーを煮込んで一旦置いておく、つまり冷まします。すると油が上に浮いてきて固まる、その油を取り去って再び温めたカレーを販売するのです。店頭には「余分な油が体に入って良いことはひとつもありません」との説明が。ハヤシライス、カレーライス、どちらも400円です。営業時間は築地らしく5:00~14:00。日祝日定休です。

裏築地の名店_2【とうふ杉寅】

次に、「とうふ杉寅」(7丁目)。
1901年(明治34年)から5代、100年以上続く豆腐店です。使用する大豆は佐賀県産の「フクユタカ」。この大豆は油分が少なくてさっぱりしているが味が濃い。この特徴が豆腐作りに向いているのだとか。

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▲マンションの1Fにある、とうふ杉寅のこぎれいな店舗。ショーケースの奥は普通の豆腐屋さんと同様、豆腐の「製造現場」です。

定番の木綿豆腐、絹豆腐は205円。ほか、やわらぎ(280円)、寄せ豆腐(248円)、よもぎ豆腐(280円)、ごま豆腐(280円)など、品揃えは実に豊富。やわらぎは特製半熟豆腐。とろっととろける食感が舌に心地よい感じ。よもぎ豆腐は付けてくれる黒蜜でデザート的に食します。ほか杏仁豆腐(216円)もあり。営業時間は7:00~18:30。日祝日と築地市場の休業日は定休です。

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▲ショーケースに並ぶ豆腐とその加工品。がんもや生揚などの揚げ物もおすすめです。

裏築地の名店_3【八木商店】

杉寅から道を挟んだ角にあるのが「八木商店」
かつおぶし屋さんです。店のホームページには、次のような文言が。「当店で取り扱う、かつお節、削り節、昆布は、各産地から東京に送ってきた品物の中から“これは”というものを厳選し仕入れを行い、お客様に提供いたします」。というわけで産地を選ばず、一番よいものにこだわるのがこの店のモットー。

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▲かつおぶしの八木商店。店内には大小様々な袋入りのかつおぶしが並びます。右側にちらと見えるビルの1Fに杉寅があります。

かつおの削り節は血合抜き。きれいに削ったものがファスナー付きのパックに入って売られています。削り方やその量も様々。少量のお試しパックもあり、使い方に応じて選ぶことができます。中味はもちろん新鮮そのもの。封を切ったときの香り、料理にかけた時の味わい――スーパーで買う袋詰めとはひと味違った風味が楽しめます。営業時間は8:00~18:00(土曜日は~17:00)日祝日と水曜日定休です。

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▲削りの異なる3種類のかつおぶし。左の小袋はともに120円。右の袋は250円。封を切ると「うーん、いい香り」。

裏築地の名店_4【渡辺商店】

最後は、このコラムの8回目、昨年9月の「築地のスイーツ」でも紹介した「渡辺商店」。手焼玉子のお店です。

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▲渡辺商店。いかにも昭和レトロな木造2階建て。扉のすぐ奥で玉子焼きが次々に焼かれています。

立派なホームページが開設されていたのであらためてご紹介。トップページに「ログイン」「カートを見る」などとあるので、ネット通販開始かな、と思って見てみると、ただいま準備中とのことでした。あと、ホームページで知った情報としては、「創業40年」「1日1000~1200個の卵を手割り」「その早業は1分間に78個という記録」。そして、いつも「玉子焼き○個」としかオーダーしていなかったのですが、ホームページには「薄味」=甘味控えめもあるとのこと。次回はこちらを賞味してみることにします。卵を10個ほど使用したずっしり重い玉子焼きは630円。営業時間は5:00~14:00。日祝日、築地市場の休業日が定休日です。

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▲昨年紹介した玉子焼きを再掲載。630円。程よい昆布出汁と、味醂、砂糖の甘さが特徴的。

豊洲移転問題を考える

さて、しばらくこのコラムで触れていなかった築地市場の豊洲移転問題。百条委員会が開催され、少しは新たな事実が出て進展をみるか、とは都民は誰も思わなかったでしょうね。4月4日に都の元幹部3名が証言する予定ですが、これも期待薄。テレビのワイドショーは森友問題と合わせ、ネタには困らないでしょうが、当事者である市場関係者は、遅々として進まぬかのような展開、たまったものではありません。

再度の豊洲地下水調査結果は驚きの数値。専門家は、その地下水を市場で使用するわけではないので、科学的には安全との談話。加えて築地市場の土壌汚染問題も噴出。都議会ではこの観点から自民党が小池知事を追及し、豊洲移転を早々に行えとの論調です。どのように決着しても都民の、いや国民の安心は得られないのではないか。このどうにもならないかのような「もやもや感」はどこから生じているのでしょう。

それは、科学=安全、行政=安心、のどちらにも信頼がおけない、という感情はもちろんですが、私たちが育んでいる食文化、という視点、論調が全くと言っていいくらいないのではないか、ということです。

この点を作家の藤原新也氏が、昨年11月、朝日新聞のコラムで指摘していました。おそらくは世界中を巡ったであろう藤原氏ですが、長年東京に住んでいながら築地市場を訪れたことが一度もなかったそうです。以下、引用です。

「地方でさえ衰退の一途を辿る市場がこの日本の首都の、それもど真ん中に存在するといいうのはひとつの奇跡と言わざるを得ないのである。<中略> 築地移転は衛生面や効率面からのみ語られるが、文化面からの視点が欠けていると言える」(2016年11月5日・朝日新聞「作家の口福・市場があれば国家はいらない」)

また、築地市場を描いた大著「TSUKIJI」の著者であるアメリカの人類学者、テオドル・ベクター氏は、「この魚市場はなぜ外国人観光客にこれほど人気があるのか」と問いかけたうえで次のように結んでいます。

「どんな位置づけで捉えようと、築地は東京にとっても日本にとっても、そして、グローバル化の加速とともに日本の食の持つ意義がますます高まるこの世界にとっても、まさしく宝といえる存在なのである」
(月刊ソトコト編集部/編「築地を考える人」木楽舎刊)

直接市場を訪れないにせよ、私たちが信頼を寄せる「築地ブランド」。
開場から80年余、それは単に地名にとどまらず、私たちの食文化、特に、海の幸を食み、育んできた食文化の象徴だったのではないでしょうか。豊洲移転構想の失敗は、おそらくはこの観点を斟酌しようとしなかったことに発しているのだと思います。

築地市場の開場は昭和10年(1935年)ですが、実は、東京府が日本橋にあった魚河岸移転の方針を示したのは明治22年(1889年)だったそうです。当時の業者は猛反対。既得権益、移転費用問題等に政治家が絡み、疑獄事件も起きる始末。きっかけとなったのは大正12年(1923年)9月1日の関東大震災でした。この震災で日本橋魚河岸は壊滅状態に。東京市はその年の12月、築地の海軍省所有地を借り受けて臨時の魚市場を開設。築地移転は一気に進むのです。最初の構想から築地開場まで46年。大都市の中央卸売市場移転というのは、それほど歳月を要する大問題なのですね。果たして築地・豊洲問題、どう展開していくのか。今後の動向を注視し続けたいと思います。

T.KOMURO

編集者。
主として男性向け情報誌の編集長を歴任。
2015年5月、住居を築地に移し、
愛犬の悟空とともに週末TSUKIJIライフを楽しんでいる。

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