しごとなでしこ - SHOGAKUKAN

【3月8日はミモザの日、国際女性デー】アメリカが起源なのになぜイタリアで盛り上がるのか

女性の皆さん。おめでとうございます!

最近少しずつ知られるようになったけど、本日3月8日は女性の日

イタリア語ではFesta della donna(フェスタ デッラ ドンナ)。ずばり「女性」を「お祝い」する日。また男性が女性にミモザの花を贈ることから「ミモザの日」と言われることも。

photo: @yuka_nim
photo: @yuka_nim

でも、元はといえば、どうしてこの日が女性の日なの?

その起源は実はアメリカ。ニューヨークで1900年代初頭の3月8日に女性労働者が婦人参政権を求めてデモを起こしたのがきっかけだとか、繊維工場の女性労働者が火事で犠牲になった事件がきっかけだとか、いやいやもっと前の1800年代半ばの3月8日に被服工場で労働条件の改善を求めて女性労働者が抗議したことが発端だとか言われているが、いずれにしてもその後の1910年にコペンハーゲンで開催された国際社会主義会議で「この3月8日という日を、政治的自由と平等のために戦う女性の日に」と提唱されたことが始まり。戦争に突入して一時中断を余儀なくされるも、戦後になって世界的に女性解放運動の気運が高まったのを受け、1975年に国連が3月8日を「国際女性デー」と定めたのだ。

へえ、そうなんだ。と思う人は多いはず。1975年にはとっくに生まれていた私だって、そのあとウン十年も生きてきたのに「女性の日」なんて存在すら知らなくて、イタリアに関わるようになって初めて知ったほどだ。

国際的な記念日なら、ウーマンズ・デーとか、レディース・デーとか言っても良さそうなものだけど、映画の割引きみたいでちっとも重みがない。でも「Festa della donna」とか「ミモザの日」と言えば、あ! 聞いたことある!という人も多いのではないだろうか。

ではなぜイタリアでは女性の日がこんなに賑わうのか。
街中の花屋がミモザであふれ、老いも若きも男たちが女たちにミモザを贈るのか。

しかもクリスマス、カーニバル、復活祭…と宗教に紐づいたお祭りごと以外でなぜにここまで盛り上がるのか。それは単にイタリア男が女好きだからとか、アモーレの国だから、だけではない、なにか理由があるような気がしてならないのだ。

そもそもなぜイタリアではミモザの日なのかというと…

実は、戦時中のファシズム政権下においてもイタリアではこうした女性運動の精神は密かに生き続け、パルチザン闘争における女性たちの反戦行動へと受け継がれていく。そして1944年に世界に先駆けてイタリア女性連合を設立することになるのだが、彼女たちが、戦後に初めて迎える3月8日を「Festa della donna」として盛大にお祝いするにあたり、何かわかりやすいシンボルをと選んだのが、3月の初めに街中を一斉に春色に染めるミモザの花だったとか。そしてその後のフェミニズム運動とともに、瞬く間に国民的行事になったと言われている。

つまり、国連が1975年に国際女性デーと定めるよりもずっと前から、3月8日は「女性のみなさん、おめでとう」とミモザを手にし、国をあげてお祝いしていたというわけだ

イタリアの歴史や文化を辿ると、実は日本と同じくらい、もしかしたらそれ以上に封建的で、男尊女卑の社会だったはずなのに、戦後のイタリアは、日本がまだ焼け野原の頃に早くも女性が参政権を獲得し、70年代に入れば離婚法、中絶法と次々に成立。結婚後の女性の姓についてもとっくに旧姓を自由に選べるようになっているが、日本なんて20年前に私が結婚した当時から夫婦別姓についてやいのやいのとやっているくせに結局何も進んではいない。

イタリアの先人女性たちは、ファシズムの脅威と戦いながらも決して希望を忘れず、一歩一歩を誇り高く歩み続けてきた、その強さが、今のイタリア女のそこはかとない余裕を作り上げたに違いない。

それは私が料理を習ってきた80歳、90歳のマンマたちを見ても、つくづくそう思う。

前回のコラムで書いたトルテッリーニ職人のイリスもしかり。

高齢のため料理教室は閉めてしまったけれどボローニャ料理の生き字引と言われているシミリ姉妹もしかり。

南イタリアの照りつける太陽の下で農作業に明け暮れる民宿のおばあちゃんも、アペニン山脈の山奥で名物の揚げパンをひたすら揚げ続けるおばあちゃんもしかり。

その数えきれないシワに刻まれているものは、苦労というより、むしろ誇りだ。

女性であることに感謝する日

イタリアの「Festa della donna」は、そんな女性たちに感謝する日。いや、もしかしたら、女性であることに感謝する日、といった方が正しいのかも。

女性たちが自分たちが女性であることに誇りを持ち、今度生まれ変わっても女がいいわ〜と確認し合う日のような気がしてきた。街のリストランテが、カップルよりもむしろ女同士のグループで満席になっているのを見ても、決して男たちを「かしずかせる」日ではないことだけは確か。自信と余裕に満ちている女性たちは、自分たちの強さや頑張りを、あえて男たちに感謝させる必要などないのだもの。

だから、好きな男からの花束を期待する日でもない。日頃の自分の努力を夫にわからせようとここぞとばかりにアピールする日でもなければ、その必要もないということだ。

ミモザ自体が決して高価な花ではなく、子供がお小遣いで買えるような、もっというとそこらへんの庭先でたくさん咲いているような花であることも実はすごく大事な要素で、気軽に花束を差し出す風習に結びついている。

気合いを入れて贈る高価なバラとか、妻の機嫌取りに仕方なく買って帰るカーネーションとはまったく次元がちがって、でも、もっと大切で、もっと嬉しいもの。

それは、なんというか、ちょっとしたありがとうの一言みたいなものに似ているんじゃなかろうか。

日頃から、ささいなことに対しても「Grazie」と気軽に口をついて出る習慣。君の奥さんのケーキはイタリア一美味しいねと言われたら「ありがとう。でも、そうなんだよ」とさりげなく認める。

こうしたイタリア男のなにげない立ち居振る舞いは、そう、言うまでもなく、毎日女性たちに対して、極めて普通にリスペクトの感情を頂いていることの証で、そしてそれをごくごく自然に口に出すこともイタリア男性の伝統的にすごいところだったりする。

ソースをとってもらったら目線はコロッケに向いたままでいいから「ありがと」と言う。

新しい服に気づいたら、また買ったのかよ、じゃなくて「お。その服、いいね」と、とりあえずほめる。

髪型が変わったら、面倒だから気づいても言わない、じゃなくて「髪、切ったんだ」と一言つぶやいておく。

結婚して何年も経つのに今さらアホくらいとか、恥ずかしいとか、照れるとか言ってる暇があったら、ものすごい熱い心がこもってなくたっていいから、ちょっとした気持ちを、ちょっとした言葉にのせて、とりえあずその都度さくっとつぶやいておく。それだけで日本の女性も誇り高く、余裕と自信をもって堂々としていられる気がするんだけどな。

おやおや、今日は落としどころがそこかい!?

という声が、いろんなところから聞こえてきそうだけど、日本でも話題になりつつある「Festa della donna」という日が、決して女性をよいしょするためのものではなく、花屋が儲かるためのものでもなく、イタリアみたいな「女性の日」として日本に広まることを願わずにいられない。

「ちょっと、私たち女はこんなに頑張ってるんだから感謝してよ!」

じゃなくて、

「私たち女性をもっと社会的に認めてください!」

でもなくて、

「私たち、女に生まれてほんと幸せ。男のみなさん、ありがとう〜!」

と全ての女性が胸を張って思える、そんな世の中になるといいな。

そしたらきっと、夫婦関係から、まつりごとまで、この国はうまくいくはずです。

山中律子 イタリア家庭料理研究家

慶応義塾大学法学部政治学科卒。電通にてコピーライターとして勤務の傍ら、イタリア家庭料理研究家として活動。毎年、子連れでイタリア各地の田舎を旅し、アグリトゥーリズモや農家のマンマに料理を習う。自宅で料理教室や料理イベントを主催。著書に「トルテリーニが食べたくて」。

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