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ミュージシャン 藤巻亮太、人生を“スイッチ”させるきっかけとなったエベレスト登頂【スペシャルインタビューvol.1】

レミオロメンとして活躍後、ソロとして活動を始めた藤巻亮太さん。現在、「なりたい自分に"スイッチ”」するために、音楽活動と並行して、登山写真家としても活躍されています。そのきっかけとなったのは一体何だったのか、初めてエベレストに登った時に彼が思ったこととはーー。30代で決意したことについて話してもらいました。

エベレストで初めて、音楽をやっている自分から離れることができた

レミオロメン 藤巻亮太

――藤巻さんと登山というと、一見共通項が見い出せなかったのですが、何がきっかけで登山に興味を持ったのでしょうか。

藤巻:20歳でレミオロメンを結成してからの10年間、とにかく目の前にあるものを必死に追いかけ、駆け抜けてきました。当時はその体力もありましたしね。でも、そのまま30歳を迎えようとしても、どこかで心身ともに消耗していて、難しいことに気づいたんです。それに、それまでは勢いが強かったからこそ、自分と向き合う時間がなかったので、一体自分は何がしたいのか、わからなくなっていたんです。そんなときに、登山家の野口健さんとお会いする機会があったんです。

――雑誌の対談でお会いしたとお聞きしました。

藤巻:はい。そこで意気投合し、すぐにプライベートで八ヶ岳に一緒に登ることになったんです。そこで、野口さんはなぜか僕が“やれる”と思ったらしく、「次はヒマラヤに行こう」と誘ってくれたんです。

レミオロメン 藤巻亮太

――それは、かなりの飛躍ですね。

藤巻:そう思いますよね(笑)。野口さんって、鋭い方ではあるんですが、いい意味で適当なところもあるんですよ。とはいえ僕も驚いていたら、「トレッキングのように、ただ歩いていれば登頂できる」と説得されたんです(笑)。ここは野口さんを信じてみようと決意し、思い切ってヒマラヤに行くことにしました。

――準備などはどうされたんですか?

藤巻:野口さんにスポーツ用品店の山の専門館に連れて行ってもらい、「これとこれとこれ!」って見繕ってもらいました(笑)。こんなに簡単に準備ってできるんだと思いましたね。みなさんも、専門館に行って、店員さんに選んでもらえればすぐにヒマラヤに行く準備が整うと思いますよ。

レミオロメン 藤巻亮太

――すごい簡単に言いますが、簡単なことではないですよね?

藤巻:僕もそう思っていました(笑)。ちなみに僕が連れて行ってもらったのは、ネパールのカラパタールという、トレッキングで有名なエベレスト街道だったんです。そこで1日に10kmくらい歩きました。毎日500mくらい高度を上げながら歩くんですが、日本では考えられないくらい大自然なんですよ。目に見えて植生が変わっていくんです。

――未体験の世界になるんですね。

藤巻:はい。最初は亜熱帯のようで、どんどん草畑のようになっていき4000mくらいの標高になると、岩と空と雪だけになるんです。そして、標高5000mを超えると、寒すぎて生き物もいなくなるんですよ。そんな大自然を目の前にすると、これまで縛られていた自分の思考がどんどん解放されていくんです。

その当時、レミオロメンとしてやっていたリアリティとはまったく違う場所に身を置いて、ただ右足と左足を順番に出しているだけの単調な行為を続けていたら、瞑想状態になったんです。それと同時に、心身ともにリラックスできるようになり、初めて、音楽をやっている自分から離れることができただけでなく、自分を客観視することができたんです。

レミオロメン 藤巻亮太

極限の場所に足を踏み入れた瞬間、自分を見つめ直し、1からやり直そうと思った

――瞑想状態となり、自分を客観視できるようになったとき、具体的にどんなことを思いましたか?

藤巻:それまで、“レミオロメンらしさ”というのをどこかで勝手につくって、その枠の中で音楽をしなくちゃいけないと思い込んでいたんです。

それと同時に、たくさんのありがたいお話をいただいていたからこそ、スケジュールに追われながら曲をつくる部分がありました。でも、そうじゃなくて、自分の中から出てくるものを大事にしなくちゃいけないと改めて思ったんです。ルーティンになるのではなく、初期衝動のように、やりたいこと、楽しいことをやりたいと思い、自分を見つめ直そうと思えたんです。

――それはエベレスト登頂をしたからこそ、思えたことなんですね。

藤巻:はい。エベレストには電気もないので夜は早く寝るし、朝は早く起きるんです。さらに体を動かしているから、いい疲れの中眠ることができるんですよ。そこで心身ともに健康になっていくように感じていました。

20代って、本当に右も左もわからないまま、社会の中で所属することに必死になり、流れについていくのに精いっぱいなところがあると思うんです。でも、誰もがどこかでプライベートで、“自分とは”と考える瞬間が一度は訪れるんです。僕はそのタイミングが野口さんとの出会いだったんです。そのきっかけを通して、まったく音楽とは違うフィールドで極限の場所に足を踏み入れた瞬間、“自分を見つめ直し、1からやり直そう”と思えたんです。

レミオロメン 藤巻亮太

――そして選んだのが、ソロ活動だったんですね。

藤巻:はい。僕は10年間レミオロメンをやり続けていて、バンドの良さとは“僕らは”という世界観で歌えることだと気づいたんです。それはメンバーも含めて、アニメの『ONE PIECE』の仲間感のように、キラキラした歌にもなるし、いいものに仕上がるんですよ。でも、だからこそ、自分個人の辛さや、悩みを曲にしたときに、これはバンドでは歌えないと思ったんです。そこで、心の中にあるドロッとしたパーソナルな部分を歌おうとソロ活動を始めました。

――新しいことをすることは不安ではありませんでしたか?

藤巻:ソロの1枚目は、バンドをやる中で個人的に思っていたことをそのまま吐き出すように曲にしていたので、するっとつくることができたんです。でも、完成した途端、自分が空っぽになってしまったんですよ。そこから30代の本当の意味でのソロ活動が始まりました。その時に感じる不安はとても大きかったですね。それからは、より深く自分の可能性を試すためにも、さまざまなことに挑戦を始めました。

初めて音楽と自分を切り離し、改めて気づいた生きるために大切なこと。思い切ってソロ活動を始めるも、訪れる高い壁。次回は、その壁を壊すために始めた新しいことについてお話をうかがいます。

藤巻亮太
Profile 1980年1月12日生まれ。山梨県東八代郡出身。2000年に小中高の同級生とバンド「レミオロメン」を結成。2003年3月インディーズデビュー、8月メジャーデビュー、11月メジャーアルバム発売する。2009年、30歳になる前に富士山登頂したいという思いがあり、実際に富士山登頂。翌年、登山家・野口健と共にヒマラヤ登頂。2012年にレミオロメン活動休止、同年ソロデビュー。2016年には、登山・旅の記録として写真集を出版するなど、ソロミュージシャン活動と並行して定期的に登山を続けている。

現在、『サントリー 南アルプススパークリング』のWebキャンペーン「#スイッチしよう」に出演し、「SWITCH!(スイッチ)」のテーマのもとに“自分の考え方や生き方“をスイッチし、自分らしく輝く6人の1人として特集企画のドキュメント映像が公開中。

▶︎サントリー 自分らしい自分に#スイッチしよう 特設サイト

文/吉田可奈 写真/天田陸人

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