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旅で訪れたら住みたくなった!「岐阜」で発見、新しい暮らし方VOL.2〜都会ではできない、ここでしかできない仕事がある!

旅先で、“好きなライフスタイル”を見つけたから“お引越し”。今、暮らしてみたくなったという気持ちから、移住を考えている人が増えているもようです。それはUターン、Iターン…さまざまな形で。旅するコラムニスト 松尾 彩が岐阜で見た「移住組のリアル」をお伝えします。

前回は、 Uターンで地元飛騨に戻り、民芸や古本を扱う「やわい屋」の朝倉さんに話を聞いた。
続いて向かったのは、飛騨の中でも特に山に囲まれた小坂地方。ここは有名な下呂温泉のほか、湯屋温泉や下島温泉、標高1,800メートルにある濁河温泉などを有し、温泉地としても非常に知られている。

また小坂は“滝の町”としても人気で、日本一滝の多い町なんだとか。ここにはそんな滝や、御嶽山、溶岩で形成された巌立峡などのアウトドアツアーを楽しみたい人のために“飛騨小坂200の滝”というNPO法人がある。

【CASE2】小坂の滝に誘われてー。
〜NPO法人飛騨小坂200滝のガイドという“ここでしかできない仕事”を選んだUターン&Iターンガイドたち〜

以前、夏の時期に、この辺りの土地の伝説や草花などのお話が楽しめる「覚明トレイル」に参加したことがある。大きな大きなコナラの葉っぱの木陰の下、ふかふかした大地を踏みしめながらのトレッキングはとても気持ちよくて、今でもその柔らかい光と迫力のある山々のコントラストは印象に残っている。今回取材に行った冬季では、カンジキを履いて凍った滝を見に行けるツアーも人気だとか。

▲写真右から 事務局長:熊崎潤さん、保田悦宏さん、米野孝斎さん、佐々木礼子さん


■1:<Uターン組>事務局長 熊崎潤さんの場合
「地元が好き。いつかは戻ってくるつもりだった」

ここでガイドとして働くみなさんは、UターンやIターン組が多い。事務局長でもある熊崎さんは、大学時代だけを県外で過ごしたUターン組だ。

「僕の場合はもともと卒業したら帰ってくるとは思ってました。こういう自然環境が好きだったし、地元が好きだったし。長男だし家も継がなきゃ、って別に継ぐ家業はないんですけど(笑)。

戻って来たいな、というのと、海外に行ける仕事がいいな、っていう思いがあったんですが、それが交差したのが前の会社(飛騨産業という家具を作る会社)だったんです。そこには新卒で入って7年勤めました。もともと休みのたびに戻ってくるほど地元は好きでした。ただ小坂は山に囲まれたエリアなので、空が狭くて。広い空が見たいぜ! と飛び出したものの、今度は広い空が恐くて(笑)。やっぱりここじゃなきゃダメだって」(熊崎さん)

▲事務局長の熊崎潤さん


■2:<Uターン組>米野孝斎さんの場合
「学生時代は田舎の魅力に気づくことができなかった」

米野さんも大学卒業後、一度東京で就職したものの3年ほどで戻ってきたUターン組。

「ここで働く人の中で唯一アウトドア好きじゃなかった人間です(笑)。アウトドアの“ア”の字も知らなくて、『(この仕事をするのに)何を買えばいいんですか?』と熊崎さんに聞いたとき『カッパがいるよ』と言われたんですが、(コンビニで売っているような)ビニールのポンチョでいいか、とか思ってたくらいです」(米野さん)

▲米野孝斎さん

高校時代の米野さんは自分の周りにこんなにも豊かな資源があると気づいていなかったんだそう。

「大学時代に友達と出身地の話になったんですが、“何にもないよ〜”なんて言ってたくらいでした。でもサラリーマンをしていて、家賃のために働いているのが嫌になって。東京のギュウギュウ詰めの電車通勤とか面白くないなって。で、地元に戻ることも考え始めた頃、帰省したときにこことは違うエリアですが、シャワークライミングをしている人に会ったんです。その人と仲良くなって、帰省するたびに手伝ったりしてるうちに“地元って面白いことしている人多いんだなー”って思うようになりました」(米野さん)

米野さんは昔から自然や動物が好きだったが、子供の頃はこの自然豊かな環境が仕事に結びつくとは考えもしなかったそうだ。でも一度外に出て、飛騨の資源とか面白さに“気づいて”戻ってきたので今の生活にはすっと溶け込めたとか。

「今だったら(大学時代の友達に)小坂は滝が多いよ、シーズンごとに面白いことができるって伝えたい。お客さんの中にも、移住まで行かずとも興味がある人が多いです。この間東京の知り合いが来たんですが、『移住をしたくなるくらいいいとこでした』って言って帰って行きました。自然が多いのもあるけれど、(褒め言葉で)変な人も多いのが良かったそうです(笑)。例えばNPO法人にも猟師さんがいるんですが、たまたまジビエの話をしていて、急に『イノシシいる?』って来るんだよ、という話をしていたら、たまたま当日それが起きたんです。『鹿いる?』って(笑)」(米野さん)


■3:<Iターン組>保田悦宏さんの場合
「ここの風景見て『ああ、いいなあ』って思って、家を買ったんです。ほんま、それだけでここに来たんです(笑)」

さて、お次はIターン者のおふたり。ヤッさんこと保田さんは大阪出身のIターンだが、もともと山登りや釣りが好きで、田舎で暮らしたいなあと思いつつも踏ん切りがつかなかったそうだ。でもふとネットで物件を探そうかなと思い立ち、奈良や石川など探してここが3件目。

▲保田悦宏さん

「小坂に来て、家を見る前に『お、いいなあ』て思って、そのあと家見てその周りの風景見て『ああ、いいなあ』って。で、(家を)買ったんです。親戚もいないけど山も近いしなって。ほんまそれだけでここに来たんですよ(笑)。

最初は(まだ大阪で働いていたので)休みのたびにこっち来て山行ったり釣りしたりして、ここ(NPO)のこと聞いて、顔出して、沢登りとか手伝わしてぇなって声かけたのがきっかけ。やってみてすごく面白かったんです。最初は観光案内とかやったことないし興味もなくて、でもお客さんに“面白いなあ”って言ってもらったら嬉しくて。

んで2年目くらいにここで緊急雇用ってのがあったので1年間それで食いつないでいたんですが、あまりにもここでの仕事が楽しくて、2年目の時にそれまでやっていた大阪の仕事も辞めて、完璧にこちらに移住しました。そして3年目に放り出されて(笑)。(*補足すると保田さんは現在観光ガイドの会社を立ち上げられていますが、飛騨小坂200滝にも所属)」(保田さん)

…例外すぎて参考にならないじゃいですか(笑)。と思わず突っ込んでしまったけれど、ある意味で“ぴったり肌があうから移住”というのは一番良いパターンなのかもしれない。


■4:<Iターン組>佐々木礼子さんの場合
「飛騨の素晴らしさを外国人に伝えていきたい」

最後に、アメリカやブラジルなど海外留学経験があり、通訳案内士(*外国人に付き添い、旅行に関する案内をする資格を持つ)をしている佐々木さん。

彼女は2017年の8月に移住してたばかり。以前は静岡の物流会社や、愛知の航空関連の会社で働いていた。山登りが好きで、岐阜にたくさんある山々を訪れているうちにここに辿り着いたそうだ。

▲佐々木礼子さん

「もともと移住は考えていなかったんです。私は“通訳案内士”という資格を持っているんですが、(日本の良い場所は)京都や奈良とか東京だけじゃないという気持ちをずっと持っていました。ここに来た時に、飛騨の自然の素晴らしさや、滝にスポットを当てている“ここの活動”が素晴らしいなと思ったんです。

この自然をこの人たちと一緒に残していくことに意味があるし、外国人にもこういう所こそ見て欲しいという気持ちが高まって。で、そういう話をここでお客さんとして参加したときに米野さんたちに熱く語ったんです。その後、ここでの活動でインバウンドをやりたいというお話をいただいて。もちろん会社を辞めることにはとても悩んだけど今まで勉強してきたことを生かしたいし、求めてくれる人がいる。だから決意して引っ越してきました」(佐々木さん)

まだ移住したばかりということもあり、雪道など慣れないことも多いそう。

「静岡にいた頃も自然は豊かなところだったので、ここでの山に囲まれた暮らしは気に入っています。ただ雪道の運転は未だに慣れません。タイヤ交換もヤッさんにお願いしたり(笑)。ここの冬の雪道は、慣れた地元の人も気持ち込めて運転しているような場所。だからここが危ないとか教えてくれます。自分でも速度を抑えたり、少しづつ行ける距離を長くしたりと車の運転も慣らしていっています」(佐々木さん)

ちなみに「雪道は慣れるのに20年はかかりますからね」(熊崎さん)。「車の四角を(ぶつけたりして)凹ませて一人前やから(笑)」(保田さん)だそうです(笑)。

「以前はいわゆるコンクリートに囲まれたようなところに住んでいたので、こういう景色のところは落ち着きます。でも早く春になって欲しいです(笑)。あと、やっぱり冬は寒くて。アウトドアで四季を実感することは楽しんですが、朝布団から出るのが辛い寒さは苦手です。まあこの“寒い”っていうのももうネタみたいなものなんですが(笑)」(佐々木さん)

「(佐々木さんが)朝6時に、英語付きで“水道から逆氷柱できた!”ってフェイスブックにあげちゃうくらいエンジョイしてるなーって思いましたよ(笑)」(米野さん)

「移住しなければ」できない仕事がここにはある

彼らの仕事は、いわば好きなことを仕事にするとき、「移住しなければ」できない仕事だ。

佐々木さんのようにここでの活動や滝に魅せられたり、米野さんのように虫などの自然動物が好きだったり、熊崎さんのように“小坂の山に囲まれた狭い空”が好きだったり、そして保田さんのようにタンポポの綿毛並みに自然とここへ流れ着いたり…さまざまな理由があるが“小坂の滝の魅力”を感じここに住まう。

もちろん自然の厳しさや居住を探す苦労もあるがそれを超えて好きなものに関われるのは素直に良いなあ、と感じた。

もちろん小坂以外にも飛騨には数多のアウトドアスポットがある。彼女たちのように滝に魅せられたら滝のあるところへ、里山が好きなら里山の美しい土地へ、木が好きなら飛騨の木工スクールに通うことだってできる。とても幅広く“好きなもの”を見つけられるその懐の広さを改めて飛騨に感じることができた。

【特定非営利活動法人 飛騨小坂200滝】
小坂の滝めぐりを含む自然ツアーなどの詳細 >> こちら

協力/飛騨市役所

【関連記事】

コラムニスト 松尾 彩

こらえ性のない飽き症という特性を生かして、雑誌からカタログ、ウエブコラムまでつれづれなるままに活動中。夫婦料理ユニット「#サイトウのゴハン」ディレクター。

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