しごとなでしこ - SHOGAKUKAN

ネコテキ Vol.43

猫好きが惚れた! 化け猫を生き生きと描く【画家・石黒亜矢子さん】インタビュー

度を超した猫好きである「ネコラムニスト」が、猫のハァハァできる画像や非常に「猫的」である物に関して徒然なるままに書き記すコラムです。

京極夏彦氏の妖怪絵本『とうふこぞう』の表紙絵も手がける、人気画家・石黒亜矢子さんとは?

前回のコラムを踏まえるならば、人間にも大まかに分けて2種類あると思うのだ。

猫っぽい人と、猫っぽくない人。

どんな人が猫っぽいか?
それはあなたが「猫っぽい」と思えば「猫っぽい人」なのだ。
例えその人が大の犬好きで、常々犬っぽい人間と公言していようが、こちらが一度「猫っぽい」と認識すればもうそれは「猫っぽい人」なのだ。

それはあまりにも強引じゃないかって?
まあネコテキな人間の思考なんてそんなもんなのだからしょうがないのである。

そんなこんなで前回紹介した化け猫などのファニーなイラスト集を描かれた石黒亜矢子さんである。この度めでたく「ネコテキな人」認定をさせていただいた。

化け猫などのファニーなイラスト集

そういえば40回以上連載している中で、人間で「ネコテキ」認定は初かもしれない。めでたい。


さて、小生がすっかりねこ目ぼれ(※1)してしまった画家の石黒亜矢子さん。イラストが好きすぎて、うっかりご本人にも会ってきた。
思い立ったら我慢しないのがネコテキコラムのいいところである。

イラスト

ちなみに初めて作品を見たときに、「長年本格的な日本画を描いている人がたまたま茶目っ気を出して描いた」ものだと思った。それほどにユーモラスでありながら筆運びは緻密で、色合いなども日本画のように美しい濃淡が特徴的だったからだ。つまりはすごく老成された方だと(勝手に)思っていた。

石黒亜矢子さん
石黒亜矢子さん

お会いするやいなや、なぜ妖怪を書くのかを聞いてみたところ予想外の答えが返ってきた。

「妖怪、全然詳しくないんです」

なんと! あのまるで本人たちに会ってきたかのような躍動感のある妖怪を書いているのに、詳しくないですと!? 小生、俄然興味が湧いてきたのである。

「もともと空想上の生き物を描くのが好きだったんです。昔は漫画っぽいというかメルヘンな洋風タッチのイラストを描いていました」

うう。今の絵柄からは想像できない。と心の中で思っていたら(失礼)…

「でも(当時から)気持ち悪い絵って言われていましたけどね(笑)」

と聞いて、なぜか安心した小生であった。

いや、決して石黒さんの絵は気持ち悪いものではない。
でもなんというか、どこか心に引っかかる、一見きれいなものでも、その奥の奥みたいなのが浮いて出てきてるような…まあわかりやすく言えば小生の好みの絵であったので、その辺りが昔から変わらないと聞いてやはり嬉しく思ったのだ。

蛇と竜のイラスト

石黒さんは子供時代から絵を描くことは好きだったそうだ。だが小中高は運動部に所属し、特に美術部に入ることもなく、気がついたらもう進路を決める時期。なるべく得意な絵を活かした方面に、ということで決めた進路先は「グラフィック専門学校」へ。

が、実際はイラストの描き方を教えてもらうこともなく、ひたすら烏(カラス)口でレイアウト線を引く毎日だったそうだ。そんな(ある意味)遠回りしながらも大好きな絵を描くことを続けてた石黒さんだが、専門学校時代には様々な「画材」というものに出会い、それが今の画風へ繋がることのひとつになったそうだ。

イラストレーターや画家と聞くと「この筆のこの太さじゃないとダメ」「絵の具はこれじゃないと」みたいなこだわりが強いイメージがある。が、石黒さんは割とその辺は気にしないそうだ。ニャンともおおらかである。

「24歳くらいの時、河鍋暁斎(※2)の百鬼夜行を見て『墨っていいなあ』って思って。で、適当に文房具屋さんに行ってお習字用のを買ってみて。さすがにそれは(イラスト用と)違う!ってなりましたけど。筆なんかも使い終わったらザブザブ洗いたいので、普通のものを使っています。今は墨がよく馴染むので和紙に描きますが、昔の作品は本当に普通の紙を使ってました」

ん!? ちょっと、ちょっと! 河鍋暁斎ですと!? ああ、石黒さんのあの動物たちが生き生きとしている様は確かにあの百鬼夜行が現代に蘇ったかのようである。

「日本の想像の生き物=妖怪を描くようになったら、妖怪の仕事が増えていったんです」

ちなみにそのタッチを気に入ったという、小生の(勝手な心の)師匠、京極夏彦氏の妖怪絵本『とうふこぞう』の表紙絵のオファーが来るなど、石黒さんの妖怪絵はじわじわと“そういうのが好きな”人たち(小生含む)に浸透していく。ほら、世の中には案外“妖怪好き”が多いのだ。

現在は化け猫の絵が多いが、これも最初はたまたまだったそうだ。

「SUNDAY ISSUEというギャラリーでCAT ISSUEという猫にまつわる展示に参加したんです。テーマは『猫の手も借りたい』と『猫舌』だったんですが、私はキノコを頭に乗せて舌を出した『猫舌茸』というシリーズを描きました。

猫舌茸
猫舌茸(石黒亜矢子作品集より)

この猫舌茸がまた可愛いんですにゃ。ちなみにほとんどは自分ちの猫や知り合いの猫モチーフにしたとかで、どれも個性があってかわゆい。ちなみにもともとは犬を描く方が好きだったそうだが、(猫が)流行っているし、(描いてみたら)体の動きなど面白いし、でも普通の猫じゃつまらないから“そうだ化け猫にしよう”といった感じで今に至ったそうだ。

なんというか想像以上に自然な感じであの化け猫の素敵な絵が出来上がったかと思うと、ご本人は妖怪は詳しくないとおっしゃってるが“化け猫の可愛らしさを広めたい化け猫の神様”が石黒さんに目をつけたとしか思えないような一連の流れである。グッジョブ、化け猫の神様。

ちなみに石黒さんは実際に現在2匹の猫を飼われているそうだ。

ishiguro4

Twitterでは家族と猫のほのぼの&てんやわんやな日々が時々投稿されているのでぜひチェックしてほしい(#てんまると家族絵日記 で検索できます)。小生はこっそりフォローさせていただき、時々ニヤニヤさせていただいている(今までの投稿をまとめた『てんまると家族絵日記』も発売されている)。

ちなみに2匹の猫、「てんまる」と「とんいち」は『石黒亜矢子作品集』の表紙にもいるのだ。家族絵日記を読んで、本にてんまるたちを見つけてはニヤニヤするのも作品集の正しい読み方である(小生的に)。

しかし豊かな想像・妄想力である
前回、日本にいる「妖怪」のほとんどは何かを戒めるためや、言い伝えなどを具象化したものが多い、と書いたが、むかーし昔にも石黒さんのような人がいて、今に伝わる妖怪の絵を生み出したのかと思うと楽しい。

これから100年後、今度は石黒さんの生み出した妖怪や空想のモノたちがもしかしたら「こんな妖怪がいるよ」という風に広まるかもしれない。100年後、生きていたらこの目で確かめたいものである(無茶だが)。

そんなこんなで初めてお会いした石黒さんは猫が好きで(次はトカゲモドキかトカゲを飼いたいと思っているほど動物全般好きだとか)、猫の絵が得意で、きっと猫の神様にも愛されてる人だと感じだ。

そうそう、11月にはなんと絵本雑誌のMOEに連載していた猫のかるたが「かるた」として発売されるそうなので発売日にはamazonの前に正座待機しておく予定である。

というわけで、インタビュー後「ぜひかるたが発売されたらかるた大会しましょう!」と(無理やり)お願いをしておいたので、実現したらまた当コラムに御出演いただこうと思う(願望)。

今から払い手(競技かるたの技の一種。パーンと手で払うように取る技。もちろん小生、できませんが)の練習をしておかないと!

※1:前回は「要するに衝動買い」的な意味合いで使ったが、妄想ネコテキ辞典によると、その2の意味として、「気に入ったら一方通行でも構わずに懐くこと」とある。

※2:河鍋暁斎…幕末から明治維新にかけて活躍した浮世絵師、日本画家。飛び抜けた写生能力を持ちながらも幅広いジャンルの絵を描き、中でも非常にユーモアな風刺画や妖怪画などを数多く描いた。のちに弟子入りした人物の中には、鹿鳴館の設計者、コンドルがいる。


石黒亜矢子(画家)

著書に、『石黒亜矢子作品集』(玄光社)、『平成版 物の怪図録』(マガジンハウス)、『ばけねこぞろぞろ』(あかね書房)、『いもうとかいぎ』(ビリケン出版)、『おおきなねことちいさなねこ』(好学社)、『えとえとがっせん』(WAVE出版)などがある。現在、映画と物語のオマージュ展「変変化劇場Ⅱ」(〜2017年10月31日)が伊勢丹新宿店本館5階=アートギャラリーにて開催中。

マツオアヤ ネコラムニスト

ライター/エディター/コラムニスト
こらえ性のない飽き症という特性を生かして、雑誌からカタログ、ウエブコラムまでつれづれなるままに活動中。夫婦料理ユニット「#サイトウのゴハン」ディレクター。ネコテキインスタグラムはこちら

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