しごとなでしこ - SHOGAKUKAN

外資系化学メーカー勤務・京江歩佑美さん(27歳)が目指す未来|働く女性ファイル

今を生きる女性にとって「キャリア」って何だろう?「都心で働くアラサーしごとなでしこ」の仕事人生に迫るこの連載は、友人を紹介いただくリレースタイル。第3回は、日本IBM勤務の小川さんの大学時代の友人、外資系化学メーカーのBASFジャパンで営業・マーケティングとして活躍する、京江歩佑美さんにお話を伺いました。

ドイツに本社を置く世界最大の総合化学会社で、国内外のものづくりビジネスの発展に尽力中

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京江歩佑美さん(27歳)
BASF東アジア地域統括本部
中間体事業 アジア太平洋地域担当

PROFILE
きょうえ・あゆみ/早稲田大学政治経済学部卒業後、新卒でBASFジャパンに入社。営業やマーケティングに加えて、取引先との物流システムを構築するサプライチェーン・マネジメント、国内外におよぶプロジェクト運営などに幅広く従事する。※2017年8月より、BASFジャパンから香港のBASF東アジア地域統括本部へ、マーケティング職として出向。


―今の会社と仕事内容について、教えてください

ドイツに本社を置くBASFは、ジーンズなどにも使用される染料の製造から始まった会社でした。その後肥料の工業生産に成功したことで食糧供給などにも貢献し、“化学を通じて課題解決する企業”として発展しました。今では世界各国に約350の工場をもち、世の中に存在するほぼすべての産業に対して、素材やソリューションを供給する総合化学会社です。

たとえば自動車ならタイヤの原料、日用品だったら裏面のラベルに書かれている成分、あるいは電子機器の液晶パネルに用いられる顔料など。それもただ原料の供給に携わるだけでなく、安全性の向上や環境負荷の軽減に寄与する原料の提供を通じて、持続可能な未来の実現にも力を入れているのです。

その日本法人にあたるBASFジャパンでの私のメインの仕事は、営業とマーケティング。自社品の販売を通して、日本の製造業のものづくりへの貢献を目指しています。求められれば海外展開などの事業戦略のコアとなるビジネス立案のお手伝いをする場合もあります。

営業職として企業のニーズをくみ取るために、顧客本社はもちろん、全国の工場を尋ね歩くことも少なくありません。1日びっちり面談予定を詰め込み、始発の新幹線に乗って出張に出かける、なんて日もあったりします。

マーケティング職としては、中長期に渡る製品販売戦略を策定します。海外の工場でつくった自社製品の市場調査や競合分析、香港のアジア地域統括オフィスと国内営業チームとの調整に苦心しています。

化学を文系の視点でビジネスに落とし込む。すべきことが見えたのが分岐点

―就職時にこの会社を選んだのには、何か理由がありましたか?

ひとつ強く思っていたのは“グローバル企業で働きたい”ということでした。一般的に外資系企業は、海外企業を日本に根付かせるのが任務だったりしますが、BASFジャパンの場合はそれに加えて“日本の素晴らしい技術や人材を海外に伝えて送り出す”という方針を打ち出していて、そこにも大きな魅力を感じたんです。

小学生の一時期、家族でアメリカに住んでいた影響もあるかもしれません。当時の私は、自分を前に押し出すことは苦手でしたが、逆に人の才能や面白さを人に伝えることは好きでした。仕事として日本の品質や技術、人材の素晴らしさを海外に橋渡しすることで日本の価値が高まり、それが世界の課題解決にまでつながるのは素敵なこと。もしもこの会社に入れたら、自分自身も素敵な人材になれるんじゃないか…。そんなふうにも思えたんです。

でも、いざ入社したら社内の先輩はもちろん、顧客の方々も研究者並みに知識のある方ばかりで、化学の素養がない文系の私は四苦八苦。一歩踏み込んだビジネスの話しを進めるには、どうしても自分も知識をもつべきだと痛感しました。

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一方で、いくら化学に詳しくても、それをビジネスとして見たときにはどのようなインパクトがあるのか、専門家であることで逆に見えにくい視点があることもわかってきました。ならば“化学”を文系の私でもわかる文脈に変換し、広く伝わりやすいかたちにして多くの人に届けていく。それが自分のすべきこと。営業のベテランの先輩と一緒に仕事をする中でプロとしてのあり方が見えてきてからは、仕事が楽しくなりました。

ただ、ひとくちに化学といってもものすごく幅広い分野なので、担当した製造品について何かを伝えようと思ったら、入念な準備期間が必要です。たとえばタイの取引先で現地の役員レベルの方を含めた40名ほどに参加してもらう6〜7時間のワークショップを担当した際には、3か月くらいかけて丁寧に準備を整えました。

講演の枠組みをつくり、1か月に1回オンライン会議で先方とディスカッションを行い、リクエストに応えるべく下調べをして社内の専門家にプレゼン資料作成を依頼。細部をつくりこみながら全体のディレクションも行いました。ものすごく大変でしたが、ワークショップを開いたことで、人と人とのつながりや業務におけるネットワークも構築されて、プロジェクトとしても個人としても得たものが非常に大きかったです。

営業メモ、考えをまとめる方眼ノート、気まぐれ日記、この3冊が仕事の味方

業務を進めながらその中で学ぶことが多い職業なので、知識を得たら忘れないようにメモしたり、アイディアや考えを紙に落とすようになりました。たとえば赤いノートは営業時の打ち合せメモで、取引条件や依頼事項などを書きとめています。PCよりメモのほうが、相手の顔を見て相づちをうちながら書ける。人と向きあう仕事には大切なことです。

花柄のノートは中が方眼になっています。パワーポイントやExcelを用いて資料作成するとき、どんな枠組みだとより伝わりやすいのか、絵に描いて形で整理しています。新しい概念を伝えるときはビジュアルで視覚に訴えかけることも必要ですよね。

紺色の手帳は、思いのたけを勢いのまま書き込む気まぐれ日記という立ち位置でしょうか(笑)。朝始業前にカフェに行って、1時間くらいひたすら書いているときもあります。たとえば男性社会の中で女性の自分がどんな点に疑問を感じ、逆にどんなときに自分らしさを活かせたのか。将来後輩たちに伝えられるように、いいことも悪いことも忘れないように書き留めておこうと。書き出すことで、起きた出来事に対して思考の整理がついてくるんです。

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―これまででいちばん大変だと感じたのはどのようなことですか?

うーん。仕事、、ではないんですが、うちの会社は半年に1回面談があって、それが毎回すごく自分自身について考えさせられる機会になっているんですよ。たとえば「今後キャリアをどうしたいのか」「人生をどうしていきたいのか」「仕事だけの人生ではよろしくない」などということを突き詰められるんです。そうした問いひとつひとつに、自分で答えを出していくことが大変でしたね。

それに対して私はずっと「海外で働きたいです」と答え続けていたのですが、この8月から本当に香港に赴任できることになりました。アジア全体を統括するマーケティング職としての駐在です。念願だった海外赴任というゴールは叶いました。でもそこで終わりではなくて、今度は「じゃあ、その赴任を通して何がしたい?」という問いに答えを出さなければなりません。

考えた私は、ふたつ答えを出しました。ひとつは「化学業界の未来を変えたい」ということ。もうひとつは「女性としてロールモデルになれるような人になりたい」という願望です。この業界にいると、女性ってなかなか出会わないんですよ。グループ全体でも約2.5割。営業やマーケティング職は特に少ないかなと思ってます。そのため、自分が海外で経験を積むことが重要だと思っていて。私が海外で実績を出す姿を見せることができたら、周囲の女性に「自分にもできるかもしれない」と思ってもらえるかもしれない。頑張りたいです。

人生は“一歩”踏み出すことで好転する

―ズバリ、京江さんにとって、仕事とは?

自分に自信をつけていく手段です。もともと小さいときから引っ込み思案でした。実は今でもちょっと人見知りを引きずっていて、でも仕事でそれではいけないので、毎日本当の自分に“強気の仮面”をかぶせてやっているような部分もあったりします(笑)。だから仕事中のささいなことでも成功体験を積み上げて、それを忘れないように気まぐれ日記に書き込んでいるんです。今はまだ自分に自信をつけていくプロセスのまっただ中。私の経験を将来の後輩たちにシェアして、役立ててもらいたい。そんな思考とサイクルをひたすら回しているところです。

今“自分に自信がもてない”とか“私にできるのかな…”とか、そんなふうに考えて立ち止まっている女性って、少なくないと思うんです。でも、ものごとはやってみないと何も変わりません。“一歩”を踏み出すことの重要性を、自分自身ですごく感じています。いずれは周囲のみんなの後押しができて、ロールモデルでもあり、サポーターでもあり、メンターでもあり。そんな存在になりたいと思っています。

撮影/豊田亮 取材・文/谷畑まゆみ

谷畑まゆみ フリーランスエディター

編集プロダクションで女性誌編集者としてキャリアをスタート。Oggi、Domani、Preciousなどで読み物企画を担当。働くこと、産むことにまつわる30代女性の本音を掘り下げる連載を担当して以来、「女性の生き方」企画がライフワークに。
心理学を学ぶために40代で会社を離れて大学院へ。目白大学大学院心理学研究科にて「30代女性の主観的幸福感」について論文を執筆。修了後はキャリアコンサルタントや産業カウンセラー資格を取得し、心理学の知識をもつエディターとして始動。現在は女性誌やWebメディアでの編集・執筆に加えて、国際NGO法人のオウンドメディアにおける編集コンサルティングのほか、心理援助職としても活動中。

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